治療0011

放射線治療業務の最適化――放射線治療品質管理室の立場から

一宮市立市民病院における放射線治療業務の一考察

背景

2007年当病院は「がん対策基本法案成立と医療の安全対策」の推進の中で「がん拠点病院」に指定され放射線治療の周辺整備を進める。同時に病院新病棟改築構想の中に2台の治療装置の導入が決定する。治療照射患者数も70名が予想されていた。さて現状は・・

1、2台の治療装置導入の放射線治療目的の中には、同時代的最新機能を有する装置が望まれた。IMRT(強度変調放射線治療)、IGRT(画像誘導放射線治療)、呼吸位相同期放射線治療    そして「定位放射線治療」を開始とするよう取り組んでいる。

2、高精度放射線治療を開始(保険適応)する際に必要なスタッフ構成を優先的に行う。

2-1 放射線腫瘍医師(常勤医師)2名、医学物理士、放射線治療品質管理士、放射線治療専門放射線技師及び放射線治療担当放射線技師の確保と養成を進め2006年確保する。

2-2 1台のリニアック装置には放射線治療専門技師2名1組体制を確立する。

2007年1月、( 放射線技術部にその必要性を説明し、要求より10ヶ月後に達成 )

2-3 放射線科から放射線治療部門への名称の独立。2の項目は、病院管理課で決定する。


3、VarianiXリニアック装置が新規に更新され、2010年3月8日治療開始。

IMRTを特化したTomoTherapy装置を導入し、2010年3月23日治療を開始する。

3-1 2009年12月から2010年3月まで、リニアック装置2台の搬入とアクセプタンスを行い、データ測定そしてコミッショニングを放射線治療品質管理士が主に行う。

3-2 旧棟のリニアック装置(Varian )は同年3月末まで行う。稼動8年。 

ここまでが現在までの経過 

4、さて、勤務時間内で放射線治療業務が出来なかった事情:

従来のリニアック装置での勤務状況と現在のリニアック装置上で「何が変わったか!」

4-1、リニアック装置の機能バージョンが増加する(KV CBCTとOBIが追加される)

4-2 1で列記した、高精度放射線治療を開始する際に必要な放射線線量測定QCツールが加わる。線量測定ツールの説明は治療装置との関係性から治療照射が終了後に行われる。

4-3 治療照射に必要なデータ測定期間が3ヶ月(90日間)が設定されていない。30%もデータ測定日に設定されていなかった事。30%の測定期間内は1日10時間以上のデータ取りを行う、また土曜・日曜日も出勤してのデータ採集する。

4-4 新規リニアックの稼動開始時は、予定の照射終了後にデータ測定の早急な強要であって、勤務内の余裕のある測定作業ではなかった。

4-5 治療計画件数などの増加で新装置では、放射線治療開始時は時間外勤務の増大は当然。


5、これからの対策;

なぜ!放射線治療業務は診断部門と比べて仕事量が多いかを説明する・・・

a:諸外国(アメリカ、イギリス,ドイツ、韓国など)では放射線治療に関わる専門職種が存在していて、専門ライセンスのスペシャリストで構成されているから忙しくない。

b:日本は医療・放射線治療は諸外国に比べるとスタッフ構成は10年遅れている。

c:放射線治療構成について日本の医療職員の理解度も10年遅れている。

d:日本の放射線治療専門技師のレベルは世界で最も高い。その仕事内容を列記する。

e:放射線線量測定士、放射線治療計画士、コンピュータ技師、放射線線量計算士、

医学放射線物理士、放射線治療品質管理士、固定具製作工作士、放射線治療技師そして患者看護士、データ入力管理士etc諸外国では放射線技師は治療照射取扱いのみが仕事。


放射線治療は、撮影系と異なっていることは明白であり、治療照射後スグには帰れない。

現在行われている放射線治療は、外科手術と同等の保険点数をもつ高度のがん治療。       この高精度放射線治療の、治療照射精度は3mm以内、3%以内の精度を維持させる。

高精度放射線治療装置の機械系の精度維持は1mm以内。

5-1 放射線治療は、照射技術が著しく進化しているため、治療照射周辺整備が日常必要。

5-2 治療照射後は、呼吸同期、定位照射、画像誘導照射の準備が必要。新規導入などを含む。がんなどの放射線治療の患者の増加に伴って、17時に帰宅する事は今日の患者数の         中では不可能。2交替性などを考えないと出来ない(他施設では採択)

5-3 新規導入の線量測定機器ツールの取扱説明の技術習得は必須となる。


放射線治療の現状を説明していくことは「治療に携わる職員の責務」でもある。1日60名70名の治療照射患者さんを「治療できること」は市民病院の誇りと考えること。

放射線治療技師は「治療患者さんの取り扱い業務でない」ことを知って頂く。

5-4 放射線治療業務は、超多忙であるけれども18時には帰宅できる体制作りが必要。

5-5 リニアック装置は18時以降治療担当者が使用しないことを明確に・・。ならば

「放射線治療品質管理士」は仕事がやり易い。(フレックスタイムの採択)

5-6 職員は「労働基準法に沿った8時間勤務」を守るべきでしょう。

6、 楽しく働ける職場つくりを放射線技術科全体で作っていく方向をさらに推進中。

7、最新で高度放射線治療の現場の精度管理の研究は、日常の業務の中で集積されたものを分析し解析する。これら照射現場の研究報告を積極的に行う任務も課せられている。

8、学会などで有名になろうとしない・・現場を知り、最新の放射線治療の安全管理の実践的報告者で好い。常に研究課題を2つ以上持ちながら安全な放射線治療業務を行う。

  医療前場は研究者ではなく専門職域の「放射線治療専門家」に徹することである。
                                    



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